ちょっとしたツキに恵まれ、太田哲也の講演会が某所で開催されることを知る。
一応モータスポーツファンのはしくれなので、あの事故のあらましはなぞっているものの、『クラッシュ』・『リバース』については、なまじ好きな世界の「負の現実」を直視するのが辛くて手を出しそびれていたのだけど、本人のナマの声を聞けるチャンスを逃してはならじと会場に潜り込む。
2001年に『Get Sports』で採り上げられた時のVTR(寡聞にして番組の存在すら知らなかったので初見)に続いて本人の講演スタート。
(恐らく)『クラッシュ』の内容に沿った形で、事故から辛いリハビリを経て、徐々に“再生”していく過程において得た様々な気づきを、ジョークを挟みつつ語る木訥とした話しぶりは、パンチ佐藤のトークのような、確かに巧いがヘンに講演スレしたあざとさ・いやらしさが無くて好印象。
印象的だったのは、終始「自分は決して強くなんか無かった」、「入院中は、看護師や家族に散々当たり散らし、『前向きに生きよう』『気持ちを切り換えよう』という、誰でも分かっている結論に達するのに1年もかかった」など、決して自分が特別な人間ではないことを強調していたこと。
そんな氏の語る言葉だけに、安易に口にされることが多い「前向きに生きる」ということの難しさがより伝わり、かつ、きっかえさえ掴めばどんな絶望からも立ち直ることは可能なんだという希望を与えてくれる内容で、大変感銘を受けた。
講演終了後、質疑応答コーナーになったので、“死の誓約書”などとセンセイショナルな面ばかり強調されていたメディアの扱いについてどう感じていたのか質問してみたところ、やはり不本意だったのか「あれは自分が言ったわけでも、言ってくれと頼んだわけでもないんですが」と前置きをしつつ、「マスコミというのはセンセイショナルな点に目を向けがちなものだから」と、あくまでも客観的姿勢を崩さない態度に、ただただ感服。
これも何かのご縁とばかり、講演終了後、会場で販売されていた『クラッシュ』を購入、氏にサインを頂く。
サインをしてもらいながら「レース界が良くなるよう、応援してます」と声をかけたはるまきに、「ホント、そう思ってます。良くはなっていってますよ」と返す氏。
あの事故でもっとも不利益(何て言葉じゃ言い尽くせないんだが、ボキャブラリィの貧困さゆえ、適切な語句が思いつかない。ご勘弁)を被った人物が、現在のレース界を前向きに捉えているという事実に心を打たれ、つくづく氏の苦労や活動を無駄にしないよう、日本のレース界が前進していって欲しいと願ってやまない。
余談ながらこの講演のことは、出先での打ち合わせが終わって帰ろうとした時、通路に張られた告知ポスターの「KEEP ON RACING」(太田哲也のモットーであり、彼が主宰するNPO団体の名称)の「RACING」の文字列を視界の端に捉えて足を止めたことで知ったもの。
このポスターに気付かなかったら、講演のことは知らずに終わっていたであろう、まさに奇跡的な偶然で、我ながら「スゲェぜ“はるまき眼”」とか思ってしまった(笑)。
#でも、当日の午前中まで講演のことを忘れてしまっていたのはナ・イ・ショ(汗)。
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