はみだしブックレビュー:『童夢へ』


童夢のサイト先着100名にプレゼントしていた林みのるの自伝『童夢へ』を読了。
本が届いた時のエントリィにも書いたけど、「若いときのエピソードは別にいいかな〜?」とか思ってたんだけど、いざ読んでみたら、いや面白い面白い。

「この親にしてこの子あり」を地でいくような父君の自由さや(お年玉付き年賀状を発案したのや、牛乳瓶のフタを開ける輪っか付きのピンを発明したそうな)、『ロケットボーイズ』に出てきた母親を彷彿とさせる、我が子の放埒ぶりに怒り、胸を痛めつつも最後は味方してくれる母君の人となりも読ませるながら、やはり、徒手空拳でレースカー造りに挑み続ける日々に遭遇した破天荒な人物やエピソードの一つ一つがとにかく面白く、散文的でまとまりに欠いているという難点を補って余りある読み応え。
煎じ詰めると、学業そっちのけで好きなことに打ち込むものの、周囲からの理解を得られず苦労した日々…といった戦後の起業家のサクセスストーリィの定番が書かれてるわけだけど、本人が「企業したつもりも経営しているつもりも皆無」と言って憚らないだけに、「成功者に学べ」的小説や自己啓発本/ビジネス書なんかで往々にして見られる作為というかイヤラシサが皆無なのが清々しい。
林みのるの、言うとめんどくさい性格(個人的にはあの超シンプルな性格は嫌いじゃないんスよ。為念)が、どのように形成されたかを知る上でも、日本のレース界の黎明期の空気を知る上でも貴重な資料なので、レース好きなら読んで損無し・・・少なくとも「みのるタソ」とか揶揄するヒト以外なら(苦笑)。

というわけで続編の『童夢から』はちゃんと買うので早く書き上げてくださいな。

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はみだしブックレビュー:『鈴木亜久里の挫折』

さしてF1属性は強く無いものの、モータースポーツ好き日本人としては、やはりそれなりに動向が気になっていたスーパーアグリF1チームの立ち上げから解散までを追ったドキュメント『鈴木亜久里の挫折』をブックオフで見つけたので、『AUTOSPORT』の拾い読みでは拾いきれなかった事実や、F1界のダークサイド(笑)でも明らかにされてるかと期待して購入、バスタイム読書にて読了。

ところがこの赤井邦彦ってヒト、文売家としてはあまり文章がお上手な方じゃないし(「ゆえに、この活動資金の準備も急務だったのだ。それにはスポンサーの確保が急務だった。」なんて繰り返し表現、とてもプロの仕事とは思えん)、モーター“ジャーナリスト”と謳われてる割には、「理由は定かではなかった」だの「知るよしもない」だの、「そこに切り込んで行くのが“ジャーナリスト”ってもんじゃね?」と突っ込みたくなるような点も多い上、関係者の談話も当時のものの再録ばかりで、さして目新しい事実がつまびらかにされているわけでもないので、ドキュメンタリーとしては何とも食い足りないデキ。
それでも、F1マネーに群がる有象無象魑魅魍魎のいかがわしさ・恐ろしさの一端を垣間見ることができたのは収穫だったかな。

それにしても、それなりに注目を浴びたSAF1が国内企業のスポンサー獲得に失敗する姿を目の当たりにすると、日本企業のフヌケぶりっつーか夢の無さ、ひいては日本におけるモータースポーツ地位の低さを暗澹とさせられてしまうのと共に、結局、今のF1ってのは「ビジネスマン」じゃないとやってけないことを痛感。ドライなビジネス感覚の有無が、ル マンを制覇出来た郷や、その他F1界の海千山千と亜久里との差なんだろうね。
亜久里がもう少し夢や理想にこだわらずビジネスライクに事を運んだら、ティームはもっと生き長らえたんじゃないかと思いつつ、亜久里の理想は理想で尊重したいし、難しいところだねぇ。

そんな本書の中で、気になったトピックをメモメモっとφ(.. )。

  • ティーム立ち上げ時、あのディレクシブが支援を申し出ていたが、当然ディレクシブの消滅とともに話は立ち消え。
  • カスタマーカー問題は、SAF1のシャシー製作に協力していた元ジョーダンのデザイナー、ポール・ホワイト経営のPJUUという会社にホンダのシャシーの知的所有権を移し、そこからシャシーの権利を買うことで回避した。
  • 上辺ではスーパーアグリに肩入れするような発言をしていたものの、結局何の手助けをしなかったばかりか、ティームが立ち行かなくなった途端F1パドックから冷酷に閉め出したバーニー・エクレストンの卑劣漢ぶり。

ところでGTなんかにはそれなりの数の大企業がスポンサーに付いて、F1とはケタが違うとは言え結構なカネをつぎ込んでるわけじゃん? モータースポーツへの理解はそれなりにあるだろうに、そういう企業達はなんでSAF1の支援には乗り出さなかったんだろう?
後、前から不思議だったんだけど、GTとかFポンのスポンサーしてるクセに、ブランディングとかプロモーションに積極的に活用してるケースが少い(IT系のイヴェントでエプソンやウィルコムがレースカー展示したって良さそうなもんなのに)のも良く分からないよね。一体何のためにスポンサードしてるんだろう? あの人達。

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はみだしブックレビュー:『勝利のルール ル・マンを制した男 郷和道』

放送作家であり、ル マンのテレビ中継の構成を手がけ、テレビ朝日チーム・ドラゴンの設立にも一役買っていたという高桐唯詩(“高”は「ハシゴ高」。サイトはMacではナゼかトップページが表示されない…)が、日本のプライヴェイトティームとして初めてル マン24時間耐久レースを制覇したチーム郷を率いた郷 和道の生い立ちからル マン制覇までの道のりを綴った著。

とにもかくにも、「ル マンで勝ちたい」と思うレース関係者なら一度は目を通すべき本。
ここには「どうすればル マンを勝てるか?」に対する解というか、「トヨタ、日産といった大企業が果たせなかったのに、いわゆるレース屋ですらない郷になぜル マン制覇が出来たのか?」がちゃぁんと書いてある。そしてその解は別にル マンじゃなくてもF1でも充分に通じるハズ。
そりゃ、商業誌の皮を被った個人同人誌(笑)『Sports-Car Racing』でおなじみ鈴木英紀が、「勝てるハードウェア、勝てるソフトウェアを揃え、適切にマネージメントする」という、メソッドとしての必勝法は『ルマンに勝つ方程式』でまとめてはいたけど、やはり監督である郷のバックボーンや資質抜きでチーム郷の偉業を語るのは片手落ちというもの(それに鈴木英紀の冗長な文章から本質を読み解くのは結構疲れるしね(^_^;))。
ともすると日本人は「技術者魂」や「オールジャパンパッケイジで勝つ」といった日本人的矜持を持ち続けて事に当たればいずれは勝てる、あるいはそうじゃないと価値がない、と思いこんでしまいがちだけど、そんな自己満足な情熱だけで勝てるほど近年のル マンは甘くない。
その現実を踏まえ、もともと論理的思考が得意な性向や、留学経験で培った外国人とのコミュニケイション能力を活かし、若い頃の経験故、「人の和」を大切にティームを築き上げていき、自己資金を注ぎ込んで“ルマンに勝つ方程式”を自らの手に引き寄せていく郷の人物像が簡潔にまとめられていて、ページ数こそ少ないけど内容的には読み応えはバッチリ。
そして郷の監督像・方法論がいかに日本のレース界において異質な存在であったか、そして郷のような事のあたり方をしない限り、日本車(企業)はいつまで立ってもル マンやF1を制覇出来ないであろうことを浮き彫りにしている好著。

ただ、結局のところレースなどという道楽は、“ジェントルマン”(日本で一般的な、立ち居振る舞いが紳士的というニュアンスではなく“おカネモチ”の意味合い)あってこそのものなのだな、ということもまた痛感させられ、日本の富裕層が、成金趣味丸出しでフェラーリやポルシェを買うものの、単なるコレクションに終わってしまい「それで競おう!」という風土というか余裕が育たない限りは、日本のモータースポーツってのは、いずれ行き詰まってしまうんじゃないかという危惧を抱いてしまうのは確か。

とまあ、そういうカタイことを抜きにしても、トム・クリステンセンが荒 聖治の実力に太鼓判を押していたことや、04年の参戦をためらっていた郷をプッシュしたのはそのクリステンセンだった、とか、最大のライヴァルティームだったヴェロックスのJ.J.レートが日本人初のル マンのチェッカーを受けた荒にかけた感動的なセリフなど、ネタを拾うためだけに読んでも損無し。
読書の秋、R8のミニカーでも眺めながら読んではいかが?

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はみだしブックレビュー:『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』

大沢在昌が新宿鮫と両さんがコラボしているエピソードを寄せている、こち亀をテーマにしたアンソロジィが出ていると聞き、鮫ファンとしては見逃せないけど、他の作家がウォッチ範囲外なので、本屋で大沢のエピソードだけ立ち読み(をい)。
未読の人の興を削いでしまうので内容には詳しく振れないけど、鮫島と晶がなんのわだかまりもなくデイトしているってことは、新宿鮫の世界的には『氷舞』以前のエピソードってことになるのかな?「なるほど、こう絡めてきましたか」という感じで、違和感無く鮫島と両さんが競演していて、なかなか楽しめる仕上がり。
鑑識課の藪の以外な過去(笑)が明らかになるので、新宿鮫ファンなら、大沢からのちょっとしたファンサーヴィスと思って読んでおいて損は無いんでなかろうか?

他にも石田衣良、京極夏彦、東野圭吾など、当代随一の人気作家が顔を揃えてるし、他の作家のテイストに触れる良い機会かもしれないから、BOOK OFFに並んだら買ってみようかな?(笑)

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はみだしブックレビュー:『レボリューション・イン・ザ・バレー』

Macの初期開発メンバーであるアンディ・ハーツフェルドが、Mac開発当時のエピソードを、修正が容易というウェブの特性を活かし、当事者達の協力を得て記憶違いや思いこみを随時正していき、極力ありのままの事実を記録しておこうというプロジェクト《Folklore.org》を書籍化した『レボリューション・イン・ザ・バレー』をようやく読了。
手に入れたのは11月だったものの、なまじストーリィ仕立てじゃないため、ヒマな時に数ストーリィずつチビチビ読んでいたので時間がかかってしまった。

プログラム的試行錯誤を綴ったエピソードでは、専門用語が遠慮無く出てきて「何のことやらさっぱり」なことがあるものの、当時のプログラマー達が様々なプレッシャーや制限をはねのけMacを世に送り出していく「Macの青春時代」が生き生きと、そして時に生々しく描かれていて、Macファンにとっては大変興味深い内容となっています。
特にハーツフェルドが休職中に開発したプログラムの買い上げについて、ゲイツは「このプログラムは1万行を超えるとは思えないから、ウチが優秀なプログラマーに払ってる週4千ドルを払うとして、君が優秀なプログラマーなら10週はかからないだろうから4万ドル以上は払えないなぁ」と言い、ジョブズは「そもそもアップルで得た知識が無ければこのソフトを書くことは出来なかったんだから、お前に好きに値段を決める権利なんか無いんだ」と言ったいうエピソードは、二人の性格というかビジネス感覚というかが如実に表れていて傑作(等のハーツフェルドにとってはたまったもんじゃないでしょうけど)。
「コマンドキィのシンボルはスウェーデンのキャンプ場を示す図記号だった」とか、「OS 9まで生き残ったデスクアクセサリィの計算機のアピアランスを決めたのはジョブズだった」とか、「Image Writerの設計・製造はテック電子(現・東芝テック)」だった。などの( ・∀・)つ〃∩へぇへぇへぇ〜モノのトリビアも色々と載っているし、ビル・アトキンソンが残しておいた、開発途中のUIの進化の過程を記録した貴重なポラなどは資料性も高いので、Macファンなら買っても損は無いでしょう。

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はみだしブックレビュー:『田宮模型をつくった人々』

『田宮模型の仕事』に続く現タミヤ社長・田宮俊作氏によるタミヤの歴史を作ってきた人々の逸話集。
文藝春秋発行の『本の話』に連載していた、「〜仕事」で書ききれなかったエピソードの数々を綴ったコラムに加筆修正を加えたものだけに、「〜仕事」のような大河的な面白味は無いものの、模型好きにはたまらない、まさに「こぼれ話」が満載。
俊作氏は「タミヤがやってこれたのはこれらの人々のおかげ」と謙遜するが、この本に登場する人々をタミヤに惹きつけたのは、タミヤ製品の品質が高かったからこそ。最近では曖昧な製品戦略に、ユーザーが批判的な目を向けることも多いようだけど、こらからもとことんまで納得のいく製品作りを目指していって欲しい。そんなエールを送りたくなる一冊。

#文春のウェブ担当者さん、《田宮模型を作った人々》のサイトにある《田宮模型歴史研究室》のURL、~が1個多くてNot Foundになるっす。

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